子どもが描く絵

Q&A 6〜10

6Q/絵を描くのは好きでないのですがぬり絵ならやります。ぬり絵をぬることが絵を好きになったり上手く描けるようになることにつながりますか

6A/ 「うちの子は電車がすきだから電車のぬりえを買ってあげても、こうなんですよ」と、ぬりえに描いてある線を無視してなぐり描きをしてあるのを見せられたり、「うちの子はこんなに上手にぬりえが出来るのに絵はほとんど描きません」という話を、教室に最初にきたときに聞きます。

なぐり描きしたぬりえはあきらかに、自分の創造する電車とは違うぬりえの絵に興味を持っていないことを現わしています。「いやだ、いやちがう、こんな電車を描きたいんじゃないんだ」と感情を表しています。

では、きれいにぬってあるぬりえはどうでしょう。「ぼくはこんな上手にぬれた」とぬった子はすべて自分が描いたように満足します。そして自分はこんなにも絵が上手なんだと思い込んでしまいます。次に、こんなに上手に出来たから電車を描いてみようと思っても描くことは出来ません。なぜならぬりえのお手本がないからです。そして、ぬりえの絵はほとんど大人の描いたものだから、子どもにとってはその通り描くことは出来ません。

絵はものをよくみたり、感じたことを、自分の形で描いていくものです。ぬり絵はすでに形が描いてあるため、お手本を描いてあげることと同じ意味をもちます。色を選んでぬっていく事は楽しいし、視覚的な効果はあると思われがちですが、自由にものを表現していく創造する心や、観察する心を失わせてしまいます。まるひとつでも自分の描いた形に色をつけることをお進めします。「まるが描ければ絵は描ける」まるを大きく描いたり小さく描いたり細長く描いたり、それを組み合わせればなんだって描けちゃいます。


参照6 猫のお散歩 4才女子
(参照6)動いている猫は足が何本もあるように見えているのだと言うことを、会話の中からわかりました。子ごもの素直な発想の素晴らしさです

7Q/絵は何歳ぐらいから習わせればよいですか

7A/何歳から習わせるのがベストということはありませんが、子どもによっては幼稚園に入り、友達から「絵が下手だ」と言われて、絵が嫌いになったり、かくして描くようになったりするケースもあります。
子どもは片言でも言葉を覚えれば言葉で表現し、ボールっをつかんだ手を広げればボールが手から落ちていくことを学び足を床に打ち付ければトントンと音が出ることを知り、いろいろな方法で自分の行動の意味を知ることになります。

クレヨンを持った手を動かすと動かした通りにクレヨンが紙の上に形を見せてくれます。手をままあるく動かせばまあるく、グチャグチャに動かせばグチャグチャに、強く描けばクレヨンが折れたり、かわをむけば裸のきれいな色が現れたりと・・・これが、子どもが絵を描き始める自然な形です。

絵を習わせるのは早いほうが苦手意識を持つことが少ないです。「何歳ぐらいから?」と聞かれたら私は、多少の個人差はありますが、ただ手を動かしている意味を持たない なぐりがきから、まるを描きこれはボールなどと描いたものに意味を持つなぐりがきが始まり言葉のキャッチボールができる3歳ー4歳ぐらいと答えます。


参照7 自由画 3才女子
参照7 お兄さん達が教室に来ているので3才になってすぐ入会しました。いつも自由に好きなように描いていきます

8Q/うちの子は顔から手足が出ています。胴体を描くよう注意してもよいでのでしょうか

8A/意味を持たないなぐり描きから、丸などを描きだす意味を持つなぐり描きに進んでいくとき、頭足人が現れてきます。顔を描いて胴体も描く子は3歳児で3割ですが、年少児になると、胴体を描かない頭足人はわずか4%、それ以後は胴体を描かない子どもはなくなります(描画による心の診断・参照)

ですから心配することはありません。頭から手足が出ている絵は幼い時期のほほえましい絵として見ていてかわいらしいやら、楽しいやら、でもほんの一時で、教えなくてもいつの間にか、当たり前のように、顔から胴体がつき足も手もしっかりと胴体について描かれるようになります。子どもの成長を楽しみに胴体、首がいつ現れるか待ちましょう。

9Q/絵具で描いた絵はいつも色がきたないですがどうしてきれいな色が使えないのでしょう

9A/子どもははじめて絵具を使うとき殆どの子ども、特に幼い子どもがやるのが 実験と称した色混ぜと、チューブの絵具をイッキに出すことです。チューブに絵具はどの位入っているのかとばかり思いっきりチューブの絵具を出します。

そう、先ず出すことなのです。これはお母様には絶対見せられない光景です。きっと心臓に悪いと思います。「江戸っ子はそばにつゆはつけねえ」と粋がってた江戸っ子も「最後にやり残したことは?」と聞かれ「そばにつゆをたっぷりつけて食べたかった」と落語にありますが、その光景をみているときいつもその落語を思いだします。もちろん子どもは1回やれば気が済みます、なにせ大事な絵具が無くなってしまうことを知るわけですから。お母様には、1箱は目をつむって下さいとお願いします。

その次が実験と称した色を混ぜ始めます。混ぜた色で絵を描くのではなくパレットいっぱいにひろげてしまいます。お母様が見ていたら「○○ちゃん止めなさい」と声を荒げると思います。そしてようやく画用紙に絵を描き始めますが、あらゆる色をまぜあわせた色は決してきれいな色とは言えませんが、まだ固定観念のない子どもにとって汚い色は存在しないようです。でもこの色混ぜ遊びはほんの何回かでおわります。以後はチューブから出した色を混ぜずに使い、年齢とともに対象物の持つ複雑な色に興味を示しほんとうの意味の色を混ぜることをはじめるときがきます。

10Q/背景をぬると絵が変になるからぬりたくない、何でぬらなくてはいけないのですか

10A/例えば運動会の絵を描いたとします。走っている子どもたちを描き、校庭で応援している人を描く。全体を描くよくあるパターンです。走っている子をぬり、応援している人をぬり、ここまでは満足なはずです。でもそれは、上手く描けているのではなく、白い画用紙に色を置いたことにより、まだぬっていない白の部分が美しく見えているだけなのです。この後、背景の校庭をぬると人物より校庭のスペースが大きいため、校庭が全面に出てきて、走っている子、遠くで応援している人たちが校庭に埋もれてしまうことになるので、ぬりたくないと言う事になります。

★なにをいちばんに描きたいかを考え背景に負けないように大きく描く

★運動会の絵を描くのなら、全体を描くのではなく、一生懸命走っている子の表情を描くとか、運動会全体を描きたいのなら、画用紙が応援の人で埋ってしまうくらい徹底して人を描く絵は形を描いて表現することと、色で表現することが出来ます。背景も含め白が残っている事はまだその絵が未完成であり、見る人が背景の白い部分を夕焼けの色のイメージをしたり、夜のように暗くしたり、部屋の中にしてしまったり連想させてしまうことにより、描いた人の絵が伝わりません。

花嫁さんの白むくのように”どうぞあなたの色に染めて下さい”との意味があるように、絵も白を残してはいけません。自分の描きたい絵により近づけるためにも背景を塗ることは重要なことを伝えます。

その時に一番注意しなくてはいけないことは「こんなにまだ描くところが空いているから描きましょう」と形を描かせようとすることです。一度そのことを注意すると子どもはそれ以後も「空いていてはまた注意される」と思い形を描いて埋めようとします。その時描くのが図形化された、地面に草を描きいくつかの花を描き、まだ空いていれば家を描き、空には雲、おひさまと、このくらい描くと空いていた空間は埋ります、空間がうまると大人は一様に安心しますが、子どもには心に傷が残りこそすれ、全く意味を持たない作業になります。

ひとつの例として紹介します、野原の絵を描いたとき、上半分が残ってしまったので青空にした、でもなんかさみしいので考えて星を描いたら「昼間に星はおかしい」といわれた。この子は「まだ空いている空に何かを描きたい」と一生懸命考えてお星さまをかいただけなのです。大人になった今も「昼間に星はおかしい」と言われて傷ついた心が残っており、それ以後絵は嫌いになってしまいました。ピカソが昼間の空に星を描いても「おかしい」とは誰も言わないでしょう。大人の固定観念で絵を見るのではなく、絵はその子が描く世界にひとつの絵であることを忘れないで子供の目線で見ることが大事です。


参照10 キャッチボール 3年男子
(参照10)キャッチボールを表現するための距離間は描かれていませんがグローブとボールがキャッチボールを連想させ、中学生のお兄さんとキャッチボールをしたことの楽しさが、大きく描いた顔から充分伝えられています。ここまで大きく描くと絵は人の心に強く印象づけられ、背景をぬつても負けません。

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