こどもが描く絵

Q&A 1〜5

1Q/うちの子は黒いクレヨンをよく使い、空を黒でぬったりします。性格が暗いのでしょうか

1A/私たち大人は、空は青、木は緑、太陽は赤ともうすでに固定観念がしっかりしてしまっているのでそこから離れられません。そのため子どもの絵も固定観念でみてしまうので「なんで空が黒なのかしら、どこか病んでいるのから」「木をを青くぬったり、黒くぬったりしているけど、色がみえていないのかしら」と不安になりつい「なんで空が黒なの、木は緑でしょう」と言いたくなりますが、言ってはいけません。子どもの自由な発想の邪魔をするだけです。 固定観念がない間は自由に好きな色でぬっていきます。空を黒でぬるのは、黒が好きなだけです。男の子の好きな色5つの中に黒は入っています。理由は「かっこいい」「強そう」です。女の子の好きな色はピンク理由は「かわいいから」です。
固定観念を持つようになるのがちょっとぐらい遅くなっても、その子の人生にはなんの影響も出ません。むしろ遅くなればより長い間自由な創造が楽しめることになります。またわざわざ教えることをしなくても、ちゃんと固定観念を持ってしまいます。


参照1 かぶと虫 5才女子
(参照1)は5才の女の子が描いた絵ですが、虫が好きな男の子のように活発で黒を好んで使います

2Q/雨が降っている絵を描いても必ずおひさまを描きます

2A/子どもにとって、特に幼い子にとって空を表現するためにはおひさまはなくてはならないものなのです。おひさまと空は別々のものではなく空の一部なのです。それはおかあさんの顔を描いたとき、まゆ毛や、鼻、は描かなくても目と口は顔の一部になっているので必ず描くことと同じことです。「真っ黒い雲がおひさまをかくし」と絵本を読んで聞かせても、自分で、雲がおひさまをかくし、その雲が雨を降らすメカニズムをわかるようになるまで、空を見上げたときそこにおひさまが ない日があることを気づくまで、雨が降っても、黒い雲を描いても、おひさまは必ず描いてあります。それはなぜなのかしら?と理由を解明するよりも、幼い子の絵として受け入れてあげればればよいのです。
「雨が降っているのになんでおひさまを描くの?」の質問は、なぜ空を描いたのに、空の一部であるおひさまを描いてはいけないのかわからない子どもにとっては、自分の絵を否定されたと思い、心は傷つき自信をなくしてしまいます。子どもの豊かな感情と柔らかな心は、おひさまを描いたことに傷つきす。
傷ついた後も子どもは違う意味でおひさまを描きます。 空が開いてしまったのでスペースをうめるため。これは「空いているからもっと何かを描きなさい」の大人のひとことが理由です。大人の感覚や大人の目線で「なぜ?」と思うことよりも、子どもの描く絵には年齢にあわせて、それぞれに意味があることを受け入れ、子ども目線に立って描く絵の豊かさを楽しみましょう。


参照2 自由画 6才女子
(参照2)雨が降っていても夕日に染まっているような薄紫の空、その空にしっかりとおひさまを描いています

3Q/「犬を描いて」「飛行機を描いて」と言われます。お手本を描いてあげても良いのですか

3A/お手本は描いてあげてはいけません。絵は感動した心、観察したり体験したりして心に残ったことを描くことです。それはその子自身が感動し、体験し、経験たことを描くことです。「描いて〜」とせがまれて描いた絵は、当然大人の感覚、大人の目線になります。子どもは描いてもらった絵をほんとうに理解し、感動するでしょうか。また描いてもらうことになれてしまうと、自分から感じようとしたり観察したりなどしなくても、お手本を描いてもらえさえすれば済んでしまいます。それはその子から積極的にものを観察しようとする姿勢がうすれ、お手本を描いてもらうからいいやという依存する心になってしまいます。そしてお手本があれば描けるけどお手本がなくては何も描けない子になってしまいます。
絵は自分で感動したり感じたことを自分の形で表現するものです、その表現された絵を、上手、下手だと比べると子どもは描けない、わからない、だから描いてとなります。絵は比べるものではありません。それは世界にひとつしかない絵だからです。そのことを子どもが理解すれば「かけな〜い」とは言わなくなります。


参照3 怪獣のあしあと 5才男子
(参照3)「絵を描けないから描かないと言って幼稚園でまったく描かないので心配」と教室に来ました。「怪獣のあしあと」「おばけのあしあと」と言いながら何枚も描いていました。

4Q /幼稚園の友達から「絵が下手だ」といわれ、手でかくすように描いています。自信を持たせてあげるにはどうすればよいですか

4A/ 自信をなくしている子に、形を描かせようとしてはいけません。形が描けなくて隠すように描いているのですから。そんなとき絵具はとても便利です。太い筆一本で画用紙に描くことをさせます。水を吸い込まない画用紙、たっぷりの絵のぐと水を吹くんだ太い筆、形を描くにはもっとも適さない道具です。描けば描くほど色が混ざり合いにじみあいます。そこからは形を上手に描かなくてはとの思いは完全に忘れ去られ、にじんでいく色のおもしろさ、楽しさ、そしておもわぬ発見があったりと、その事に夢中になり、手でかくすことを忘れます。更に、えのぐのにじむ形から「これなんにみえる」などの形のみつけ遊びをやったり、クレヨンと絵具のはじき絵を何回か続けると、上手に描くことだけが絵ではないことを学び、自信を取り戻し描きたいものを自分の形で描きはじんめます。
特に注意しなくてはいけないことは、この自信をなくしているとき、お手本を描いて上手に描かせようとしてはいけません。お手本のように描けなくてますます自信をなくしてしまいます。


参照4 自由画 5才女子
(参照4)はクレヨンと絵具のはじき絵を楽しみ、絵具を混ぜ合わせると色が変ることを楽しみながら描いた絵です

5Q/うちの子はそこに描くすべてのものより人自分を大きく描きます、注意しなくても、バランスのとれた絵を描くようになりますか。注意はしないほうがよいのですか

5A/子どもは、自分中心に世界が回っているとおもっているあいだは、すべてのものの中で一番大きく描くのが自分です。自分がお山の大将一番とおもっているから当然のことです。幼稚園や小学校に進むようになると、自分のまわりに目が向き、力の強い子、足の速い子、勉強の出来る子などの出現は、自分との力関係をあきらかにし、世界は自分中心にまわっていないことに気づきます。また、先生も絶対的な存在となります。このように、自分とまわりとの距離感が自覚できてはじめて、絵にもバランスのとれた表現ができるようになります、まわりとの距離感がわからないのにそのことを注意したり、教えたりして描かせても、理解して描いているのではなく、言われた通りのことを描いているだけです。そして描いている子どもの心は、わからないことを描くので混乱してしまい、自信をなくしたり、絵が嫌いになったりするきっかけにもなります。
絵は色のバランスを考えたり、画面上に描く対象物の調和を考えながら描きます。自分とまわりとのバランスが理解出来たとき絵から不釣合いなバランスはみられなくなります。りんごを描くとき、赤いりんごに赤い背景はぬりません。あかいりんごをよりひきたたせるために、何色がよいかを考えます。絵は白い画用紙にすべて自分だけの感性で描いていきます。心の表現を通して、自立する心や他ととの調和する心、自分の意見をはっきりと言えることを学びます。


参照5 秋をみ〜つけた 5才女子
参照5 自分、赤とんぼの順に描きました、赤とんぼの大きさがみつけた秋を現わしています

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